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2017年12月4日

「出演者・スタッフからのメッセージ」 第1弾 阿部早希子(ソプラノ:テオドーラ役)

出演者の写真

ヘンデルの作品を演奏するにあたっていつも感銘を受ける事は、登場人物の人物像や感情の変化の様子が繊細に、また鮮明に音に紡ぎ出されているところです。そこには台本から読み取れる人物像がより深く、より豊かに、生き生きと描き出されています。

信仰を曲げないのならば、死を許されず、男たちから辱めを受ける運命を知らされるテオドーラは、それでも信仰を曲げない強さを持ち合わせつつも不安に怯え、どこかあどけなさを残しています。しかし愛する人に救い出され、辱めを受ける運命から逃れられた彼女は、今度は愛する人を救出するために死の待つ運命へ自らの身を投げ出します。

そこにはもうかつてのあどけなさはなく、信念を持って運命を受け入れる強くたくましい女性へと変化したテオドーラの姿が描き出されているように思います。

《テオドーラ》は間違いなく悲劇であるのに、大きな悲しみや苦しみのうちに幕を閉じるオラトリオではなく、二人が死にゆく二重唱では、純粋なる信念を貫き通し、愛する人と死にゆくことへの静謐な幸せすら感じさせます。

このオラトリオはテオドーラの愛と信仰の凄みと同時に人間の愚かさや弱さをも描いた、人間の尊厳への愛に溢れた賛歌のような気がします。