Handel Festival Japan

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第17回 ヘンデル・フェスティバル・ジャパン - メイン企画 オラトリオ《ヨシュア》全3幕 (HWV 64)「幕間オルガン演奏付き」

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挨拶 《ヨシュア》公演を終えて=渡邉さとみさんの追悼演奏について・・・・・・・・・・三澤寿喜

 第17回ヘンデル・フェスティバル・ジャパンの《ヨシュア》公演は1月25日、無事終了しました。
当日は、本編上演に先立ち、昨年逝去されたヴァイオリン奏者、渡邉さとみさんの追悼演奏をさせていただきました。皆様ご承知のとおり、渡邉さとみさんはフランスの名門古楽オケ、レザール・フロリサンのメンバーとして活躍されたバロック・ヴァイオリンの名手です。HFJでも、一時中断はありましたが、第1回から主要なメンバーとしてご協力いただきました。特に、2018年春の《メサイア》全曲録音ではコンサートマスターを務めていただきました。このため、HFJメンバーの総意として、《ヨシュア》公演前に追悼演奏をさせていただくこととしました。
 
 追悼演奏の曲目はヘンデルの《シオンに上る道は嘆く》(HWV 264:通称《キャロライン王妃のための葬送アンセム》)の序曲(シンフォニー)でした。この曲を選んだ理由は二つありました。

 第一は、当然のことながら、この曲はその名のとおり、元々追悼用の作品であり、かつ稀有の傑作であるからです。《キャロライン王妃のための葬送アンセム》は1737年11月20日にジョージ二世妃キャロラインが逝去した際、王室からの依頼で作曲されたものです。キャロラインとヘンデルは年齢も近く、ハノーファー時代からほぼ30年もの間、大変親しい間柄でした。私は密かに、キャロラインはヘンデルの「不滅の恋人」であったとすら思っています。このアンセムからは、頼まれ仕事という次元をはるかに超えた、ヘンデル自身の個人的な深い悲しみを聴き取ることができます。HFJメンバーとして共にヘンデル作品の紹介・普及に尽力していただいた渡邉さとみさんの追悼の曲目としてこれ以上ふさわしい曲はないと考えました。
 
 第二は、《キャロライン王妃のための葬送アンセム》とオラトリオ《ヨシュア》は実は隠れた糸で結ばれているからです。ヘンデルはオラトリオ《エジプトのイスラエル人》(HWV 54)を作曲する際、その第1部に、《キャロライン王妃のための葬送アンセム》を、〈ヨセフの死を悼む葬送アンセム〉とタイトルだけ変更して、丸ごと借用しました。ここにオラトリオ《ヨシュア》との繋がりが生まれました。
 
このタイトルに現れるヨセフとはどのような人物でしょうか? 
以下、少々長くなりますが、、、。

カナンに住むヤコブには12人の息子がありましたが、その11番目の息子がヨセフでした。彼は父ヤコブから
特別に可愛がられたため、兄弟たちから妬まれるようになります。兄弟たちは通りがかった隊商にヨセフを奴隷として売り飛ばしたため、ヨセフはエジプトに住むことになります。彼はその知恵と預言の力によってエジプトで重用されるようになり、宰相にまで昇りつめます。そうこうするうちに一帯を大飢饉が襲います。エジプトはヨセフの預言により、あらかじめ対処していたため難を逃れましたが、カナンは危機にさらされます。カナンに住むイスラエルの一族はヨセフを頼ってエジプトに移り、そのままエジプトに定着します。しかし、ヨセフが死に、イスラエル人が際限なく増えると、すでにヨセフへの恩義を知らないエジプト人はイスラエル人たちを奴隷とし、苦役を強います。この苦難の時代に現れたのがモーセでした。彼はイスラエルの民を率いてエジプトを逃れ、カナンの地を目指しますが、カナンを目前にしてこの世を去ります。代わって指導者となったヨシュアが全イスラエルを率いて再びカナンの地に入り、敵を滅ぼして定住するのです(このアンダーラインの部分がオラトリオ《ヨシュア》で描かれる部分です)。
 このように、イスラエルの歴史上、ヨセフ - モーセ - ヨシュアは1本の糸でしっかりと結ばれており、〈ヨセフの死を悼む葬送アンセム〉の序曲をオラトリオ《ヨシュア》本編に先立って演奏することは文脈上、とても自然なことなのです。さらに、〈ヨセフの死を悼む葬送アンセム〉の序曲とオラトリオ《ヨシュア》の序曲との連結は調性連結が自然であるばかりでなく、曲調も相互に見事な対照をなし、音楽的に素晴らしい効果をもたらします。
以上のことをふまえ、当日は追悼演奏とオラトリオ《ヨシュア》とを一体化させ、間を空けずに両曲を連結演
奏させていただきました。

なお、ヘンデルはヨセフを題材にしたオラトリオ《ヨセフとその兄弟》HWV 59)も作曲していますので、カナンの地を離れたイスラエル人たちがエジプトに移って苦難に遭い、再びカナンに戻るまでを、《ヨセフとその兄弟》、《エジプトのイスラエル人》、《ヨシュア》という三つのオラトリオで描いていることになります。私はこれら3曲を「カナン三部作」と呼んでいます。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

当日の追悼演奏とオラトリオ《ヨシュア》冒頭部分をお聴きいただけます。
あらためまして、渡邉さとみさんのご冥福を心よりお祈り申し上げます。

1.  渡邉さとみさん追悼演奏
《キャロライン王妃のための葬送アンセム》=〈ヨセフの死を悼む葬送アンセム〉序曲(シンフォニー)
2.  オラトリオ《ヨシュア》序曲(導入曲)
3.  イスラエル人たちの合唱Ye sons of Israel 「汝らイスラエルの息子たちよ」



曲目

オラトリオ《ヨシュア》 全3幕 (HWV 64)

日時

2020年1月25日(土) 15:30開演予定

会場

浜離宮朝日ホール
浜離宮朝日ホールへのアクセス »

チケット

本演奏会は好評のうちに終了しました。

オラトリオ《ヨシュア》出演者

独唱
ヨシュア(イスラエルの指導者)=辻裕久(T)
アクサ(カレブの娘、オトニエルの恋人)=広瀬奈緒(S)
オトニエル(若き指揮官)=波多野睦美(Ms)
カレブ(族長)=牧野正人(B)
天使=前田ヒロミツ(T)

管弦楽:キャノンズ・コンサート室内管弦楽団(古楽)
〈バロック・ヴァイオリン〉
川久保洋子(コンサート・マスター)
天野寿彦
池田梨枝子
小玉安奈
齋藤佳代
高岸卓人
高橋奈緒
保坂喬子

〈バロック・ヴィオラ〉
伴野剛
中島由布良

〈バロック・チェロ〉
懸田貴嗣
髙橋麻理子

〈ヴィオローネ〉
角谷朋紀

〈フラウト・トラヴェルソ〉
岩井春菜
菊池奏絵

〈バロック・オーボエ〉
荒井豪
佐治みのり

〈バロック・ファゴット〉
岡本正之

〈ナチュラル・ホルン〉
下田太郎
齋藤善彦

〈ナチュラル・トランペット〉
内藤知裕
三澤徹
池田英三子

〈バロック・ティンパニ〉
村本寛太郎

〈チェンバロ〉
平野智美

〈オルガン〉
森亮子

〈リュート〉 
高本一郎

合唱:キャノンズ・コンサート室内合唱団
〈ソプラノ〉
小野綾子
千石史子
本宮廉子
山崎千恵
吉澤有香
渡邉公実子

〈アルト〉
奥野恵子
加形裕子
田中栄吉
堀江真鯉男
宮﨑恵美子
横町あゆみ

〈テノール〉
藍原範道
遠藤貴之
福島康晴
前田ヒロミツ

〈バス〉
小家一彦
石井賢
井手守
小藤洋平
酒井崇

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